研究視点を考える際の参考文献

専攻過程に進む直前の2年生向けの演習授業で、各人の問題意識について発表しているのですが、本記事では、その際に発表を聞きながら思いついて提案した文献についてまとめます(授業後に思いついたものも追記しています)。 それだとブログタイトルのつけよ…

日本研究のための文献リスト

本リストは、私、長尾が2023年度に「日本研究概論」という授業で学生に紹介した文献リストの一部を公開するものです。聴講者は1、2年生向けの入門講義でした。 講義としては、日本研究の来歴を振り返り、近代日本の文化を今日的な視点から研究する際の論点を…

初学者向けメディア史関係文献リスト:雑誌から日本の近代史を見る

本リストは、私、長尾が2023年度に「雑誌から日本の近代史を見る」という授業資料に添付した参考文献リストを元とし、その一部内容を修正したものです。聴講者は1、2年生向けの入門講義でした。 見返すとなかなか不十分な点が多々あって気になりますが、近代…

Podcastの作り方

anchor.fm ありがたいことに「みちくさのみちpodcast」友人はじめいろいろな方に聴いていただいているようです。 誠にありがとうございます。 私自身は、動画より低コストで、分野外の論文を読まない人への研究の紹介ができ、さらに学生向けには何かの授業で…

Podcastを初めてみました

anchor.fm タイトルのとおりなのですが、新年でPodcastなるものをはじめてみました。 昨年末、家族の紹介でお会いしたワインのインポーターの方がお仕事で愛用しているらしくて、「ポッドキャスト良いですよ、研究とかの発信にいかがですか?」と勧めてくだ…

帝国図書館の利用者たち

">『メディア史研究』52号(2022年8月)に「帝国図書館の利用者たち」というのを書いた。 "> cir.nii.ac.jp 元々、大正、昭和期の帝国図書館史のことをちゃんと調べられていないなという問題意識から準備したもので、メディア史研究会の例会で発表した…

歴史資料(史料)とは何かについて

講義で「史料と史料批判」について説明する際、自分は次のような説明を行っている。 * 史料とは、歴史研究者が読み解く素材であり、文学研究者や思想、美術の研究者が「作品」に対するように、社会学や経済学の研究者が統計を分析するように、あるいは理系…

論文のルールをドレスコードのようなものとして理解する

相変わらず論文の書き方の本ばっかり読んでいるわけだが、日本語学の石黒圭氏の本が面白い。 論文・レポートの基本 作者:石黒 圭 日本実業出版社 Amazon 特に後半は、これは日本語学を専門とする著者ならではのものだと思うが、論文用の適切な日本語表現につ…

論文とその課題設定について

山内志朗『新版 ぎりぎり合格への論文マニュアル』を読んでいて、「そうそれ!」とものすごく同意できる一文があった。 立派な論文・著書を読んで、「私には付け加えることはありません、素晴らしい内容ですので理解して、整理したいと思います」という殊勝…

レポート執筆における主観と客観

レポートの書き方を授業で指導するなかで、「客観的」「論理的」に書こうねと話をする。自分の個人的な主張や感想を語るだけではダメなので、客観的な根拠が必要なんだよ、と話す。感想文とレポートは違うんだよ、というバリエーションもある。 例えば慶應の…

次世代デジタルライブラリー以後の歴史研究

NDLの次世代デジタルライブラリー、機械が文字を読み取って明治大正時代の資料まで検索できるということですごいものになっている。『樗牛全集』に関しては事実上全文検索ができるようになってしまった。 そんななかで次の記事を見た。 cocolog-nifty.hatena…

ジャパンサーチと歴史研究

本務校の紀要にこういう論文を書いた。 「ジャパンサーチと歴史研究―日本近代史分野での活用を中心に―」『城西国際大学大学院紀要』25号(2022年3月) ちょっと前に図書館史の勉強会で発表した内容を修正したもの。 歴史学である以上、史料は原本を見なけれ…

レポートの段落冒頭1字下げ問題考

学生向けに、日本語のライティング指導をしている大学教員にはなじみ深い話題であろうが、卒論やレポートの添削をしていると必ずぶつかるのが、文章の書きだしや、改行後の次の段落の冒頭を1字分あけるルールの不徹底である。 レポートの教科書にはだいたい…

2020年に出た本で印象深かったもの

コロナ禍でいままで経験したことの無いような年の暮れです。緊急事態宣言が出る以前のことは、なんだか今年の事だったか去年の事だったかすら記憶が曖昧で…。皆様もくれぐれもお気を付けください。 大学ではオンライン授業のため、在宅で仕事をする日が多く…

オンライン授業(ブログ講義)事例

この記事は、オンライン授業の事例紹介です。 2020年度春学期 城西国際大国際人文学部の「歴史・文化の視点」の授業のうち1回分を、「思想史研究の事例―もの言う読者たち―」と題して行った回の一部改変です。 改変を加えた個所は授業出席のフォーム(Googlef…

オンライン授業でちょっと困った話―ゼミ編

前回の続きです。前回の記事はこちら。 negadaikon.hatenablog.com ブログ講義の一方で、あんまりうまくいかなかった気がするゼミの記録です。同時双方向型でテレビ会議を使って実施しました。 どの辺を改善していくべきか、まとめてみたいと思います。 かわ…

オンライン授業(オンデマンド型)をやってみた話―講義編

ぐっとぴさんによる写真ACからの写真 オンライン授業の実践について、やったことの記録を備忘のために書き残します。この教育効果については、半期だけでどれだけの成果が出たかは議論しにくいとは思うので、その評価は置いておきます。 いわゆるオンライン…

日本史演習系科目の運用とSlack

タイトルのまんまなのですが、昨年度の終わり頃から、Slackを始めて、学部3年以上の弊ゼミ生は全員登録するように。ということにしております。 全く予期せずして、今般の新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大の影響によって、新年度の授業が対面式で行え…

2019年に出た本で印象深かったもの

図書館を辞めて大学教員になって2年目になりました。また私事でも色々ございました。そんななかで読んで考えさせられたもの、印象に残ったものなどをランダムに挙げていきます。お送りいただいたものでご紹介できないものもありますが、ご容赦ください。 漫…

日本史前近代史(古代から近世まで)の勉強に読んだ参考文献まとめ

春学期講義が終わった。今期は日本史の概論で前近代も担当することになったので、参考にした本をまとめておく(ただし全部ではない)。わかりやすい説明の仕方を求めた結果、ついつい新書や概説が中心になってしまって、本格的な研究書には手が出せなかった…

2018年に出た本で印象深かったもの 増補

2018年は図書館員から大学教員への転職などがあり、また近親者を見送ったり、個人的には大きな変化、別れのあった一年でした。そんななかで読んで考えさせられたもの、印象に残ったものなどをランダムに挙げていきます。お送りいただいたものでご紹介できな…

近代日本の留学生の歴史に関する文献リスト

我が家にテレビがないので「西郷どん」は視聴できていないのだが、8月26日の放送では、長州ファイブや薩摩スチューデントについて言及があったようだ。 長州ファイブ [DVD] 出版社/メーカー: ケンメディア 発売日: 2007/09/28 メディア: DVD クリック: 33回 …

高校日本史の学び直しのための文献ガイド

※2018/8/23ちょっと文献追加 図書館を退職して大学に移って日々感じていることの一つに、高校で日本史を取らずに大学に入って、後で日本文学やその他の授業でやっぱり日本史の知識がいるんじゃないかと苦しんでいる子の存在がある。日本史の担当教員になった…

日本文化論を学ぶ人に勧める本のリスト

今年、本務校の大学で、「日本文化論」という講義を担当した。授業のレポートも締め切ったので、講義中で取り上げた本、発展的に知りたい人におすすめの本、本当は取り上げたかったのだが時間的制約で断念した本、などをまとめておく。不十分なリストである…

大学1年生に一読を勧める本のリスト

図書館を退職して大学教員になって、4か月が終わろうとしている。なんだかあっという間だったが、学生さんの顔を見ていると元気が出てくるもので、授業は上出来とはいえなかったかもしれないが、どうにかここまで来ることができた。 図書館勤めの経験を活か…

日本の検閲に関する本についてまとめ

少し前から必要があって集中的に検閲とか言論統制に関わる本を読んでいたら、友人に検閲についてわかりやすくまとめた本は無いものかと聞かれ(なにやらtwitterで言論統制の歴史がちょっと話題になったようでもあり)、まとまっているもの、となるとすぐに思…

第19回 #図書館総合展 に行ってきた。

図書館総合展とは、毎年秋に横浜で3日間にわたって開催されているもので、公共や大学、その他各種の図書館関係者が集まって様々なフォーラムが開かれ、図書館のこれからについて議論するとともに、図書館に関わりのある新商品、新たなサービス、新システムの…

ICT時代の日本史文献管理・再考

※以前の記事「ICT時代の日本史文献管理考」の続編?です。 ※例によって、自分のやり方を書いてみて、もっといい方法が無いか考え直す作戦ですので、アイデアがあったらおよせください。 日本史の研究について、少し前に出た『わかる・身につく歴史学の学び方…

「図書・図書館史にまつわる本棚」を作ってみた

最近、図書館史ってどうやって勉強するんですか、と言われることが増え、また、人前でも話す機会が増えたので、その都度「独学です」と答えるのも心苦しく、言われたほうも困るだろうと思うので、ふと思いついて、ブクログのサービスを利用して、「図書・図…

図書館史ノートその4 印刷の歴史

今日流通している本は紙に印刷されて複製、頒布されている。印刷という場合、紙などにインクを使って文字、図、写真を複製することを指すが、パソコンの普及や技術の発展などにより、昔の定義と今日の定義ではだいぶ様変わりしている。 印刷の起源も、実は定…