ジャパンサーチと歴史研究

本務校の紀要にこういう論文を書いた。

ジャパンサーチと歴史研究―日本近代史分野での活用を中心に―」『城西国際大学大学院紀要』25号(2022年3月)

ちょっと前に図書館史の勉強会で発表した内容を修正したもの。

 

歴史学である以上、史料は原本を見なければどうにもならないはずだ。という考えを一方に持ちつつ、そうはいってもコロナ禍でオンラインでの論文指導を余儀なくされていて、ネットで見つけた「史料」の扱いをどうすべきなのかについて、学生に、「少なくともこのくらいはやってほしい」というのを伝えるために書いた研究ノート。慌てて書いたので文は粗く、あまり練られていない。

研究者に向けて、いくつか意識した点(あまり明示的に書けていないかもしれないが考えていたこと)。

  1. デジタルアーカイブについて、初登場したころの2000年前後の近デジとかのイメージを引きずってると、今は全然違うので捉え損なってしまうおそれがあること(東日本大震災などを転機として2010年代に大きなうねりがあったこと)。文書館機能の電子版=デジタルアーカイブと考えない方がいい。

  2. 図書館情報学において「アーカイブ」(アーカイブズではない)は、理念としては、誰かが残すために集め、整理するプロセスが不可欠なものと定義される(根本『アーカイブの思想』参照)。歴史研究者はそのデータの一部分に、史料批判を加えて研究に使っているにすぎない。

  3. ジャパンサーチ以後、とにかくデジタルアーカイブには何かしらの単語を入れれば昔の本などのコンテンツが出て来るようになったのだから、そのなかから何を選び出すかが研究者の腕の見せ所。

  4. デジタルでも刊本でも歴史研究者は用いる史料を自分で批判して使うべきなので、その成果があまりよくないとしたら、責められるのはデジタルコンテンツの提供元機関ではなく、論文を書いた当人。

  5. 歴史研究者は、ジャパンサーチは第一次的な「史料」発見ツールとして使うことができると思う(コンテンツを「史料」にしていくためには、その後研究者の目での史料批判していく作業が必須として)。論文などの文献探索はNDLサーチで棲み分ければよいと思う。図書館のレファレンスサービスだとノイズが多いと嫌がる図書館員もいるかもしれないが、まさしくその点こそが研究者が使うべき点。そこに何かありそうだったら他の人に代わってでも全ての情報を確認するのが(とくに歴史では)研究者の仕事に思える。何が使え、何が使えないかをよく見極めて歴史研究のなかでも「史料」の検索ツールとして活用したらよいと思う。

 

 

 

 

 

ユーザーガイド含め、ちょっと最近新しくなったらしいので、まだまだ活用していきたい。