近代日本の留学生の歴史に関する文献リスト

　我が家にテレビがないので「西郷どん」は視聴できていないのだが、8月26日の放送では、長州ファイブや薩摩スチューデントについて言及があったようだ。

長州ファイブ [DVD]

グローバル幕末史 幕末日本人は世界をどう見ていたか

　春学期に担当した、日本と欧米の「文化交流史」に関する歴史の講義で、私も長州ファイブなどを取り上げた。

　この授業では幕末に国禁を冒して渡英した人々から始まる「留学生の歴史」をテーマに、あれこれと調べつつ試行錯誤しながら話してみたのだが、けっこう改善の余地があったので、あとで思い出して修正するために、まだ仮のリストではあるが、講義で使った参考文献をあげておく。すべてを網羅しているわけではないが、もし何かあれば、授業改善のため情報をお寄せいただけると幸いである。

　留学生の通史に関しての基本文献には

近代日本海外留学生史〈下〉 (1978年)

近代日本の海外留学史 (中公文庫)

洋行の時代―岩倉使節団から横光利一まで (中公新書)

近代日本海外留学の目的変容―文部省留学生の派遣実態について

　幕末の幕臣たちの渡航者、長州ファイブ、薩摩スチューデントたちについては、上記文献以外に

幕末オランダ留学生の研究

大君の使節―幕末日本人の西欧体験 (中公新書 (163))

林竹二著作集〈4〉幕末海外留学生の記録 (1985年)

明治の技術官僚 - 近代日本をつくった長州五傑 (中公新書 2483)

薩摩藩英国留学生 (1974年) (中公新書)

密航留学生たちの明治維新―井上馨と幕末藩士 (NHKブックス)

明治を作った密航者たち (祥伝社新書)

森有礼 (人物叢書 新装版)

　留学先で困難な状況に立ち会ってもメンタルが強すぎる高橋是清などの場合

随想録 (中公文庫プレミアム)

　岩倉使節団については、『米欧回覧実記』に書かれた場所を実際に見聞しながら物された

岩倉使節団『米欧回覧実記』 (岩波現代文庫)

　をはじめ多数の文献がある。

　岩倉使節団に同行した女子留学生・津田梅子については

津田梅子の社会史

　明治十年代に帰朝して法律知識を持ち帰ってくる官僚たちについては、

法制官僚の時代―国家の設計と知の歴程

法学の誕生：近代日本にとって「法」とは何であったか (単行本)

　中江兆民、森鴎外や夏目漱石をはじめとする個々の人物について。

開国経験の思想史―兆民と時代精神

和魂洋才の系譜 内と外からの明治日本 上 (平凡社ライブラリー)

和魂洋才の系譜(下) 内と外からの明治日本 (平凡社ライブラリー)

破天荒明治留学生列伝―大英帝国に学んだ人々 (講談社選書メチエ)

あめりか物語 (岩波文庫)

明治文明開化の花々―日本留学生列伝〈3〉

　姉崎正治「洋行無用論」に関して、その発端になったドイツの黄禍論について。

黄禍物語 (岩波現代文庫)

黄禍論とは何か―その不安の正体 (中公文庫)

黄禍論と日本人 - 欧米は何を嘲笑し、恐れたのか (中公新書)

ヴィルヘルム２世 - ドイツ帝国と命運を共にした「国民皇帝」 (中公新書)

　留学に限られないが、文化交流の歴史を推進する団体について。

戦争を乗り越えた日米交流: 日米協会の役割と日米関係 1917‐1960

もう一つの日米交流史

帰一協会の挑戦と渋沢栄一:グローバル時代の「普遍」をめざして (渋沢栄一と「フィランソロピー」)

　そのほか、日本からの文化の「発信」について考えさせられた本として。

世界の読者に伝えるということ (講談社現代新書)

グレイト・ウェイヴ―日本とアメリカの求めたもの

その他近現代における国際交流の基本的な通史として。

新版 国際交流史―近現代日本の広報文化外交と民間交流

　戦後だと

もうひとつの日米関係―フルブライト教育交流の四十年

逆に、日清日露戦争のあと、海外から日本にやって来た留学生たちの動向については授業でほとんど取り上げられなかったので、今後の課題ではある。