2012-01-01から1年間の記事一覧

「図書館と歴史学の間」小考

最近目にとまった記事から 興味深い3つの記事の紹介から始めてみたい。 山田太造「日本史研究推進における情報技術・デジタル技術の役割」『人文情報学月報』第17号(2012年12月27日付発行) 情報学と日本史研究の「距離」について、こんな風に的確に要約さ…

「残念な論文」執筆法

院生時代に愛読していた『MASTERキートン』に好きな話がある。研究者と保険屋の間で「優秀な保険の調査員」であることに悩んでいたキートンが大学図書館に行ったときのもので、図書館でバイトしている院生がカウンターに現れた人物をキートンと知るや、その…

学びて時にこれを習う(5) 藩校文庫とその行方

前回まで (1)、(2)、(3)、(4) 文庫とは何かを考える 江戸時代の学問観と文庫の関係を辿ってきて、ようやく文庫設立の動機のようなところまで書くことが出来た。しかし国学者が作った文庫以外にも、江戸時代には多数の文庫が存在した。幕府の昌平…

学びて時にこれを習う(4) 国学と文庫

国学の登場 前回まで(1)、(2)、(3) 前回の終わりで、近世思想における学問の展開と文庫について、もう一度新しいフレームのなかで考え直してみることも重要そうだと書いた。そういった図書館史を構想する場合、もちろん私自身がもっと江戸時代の出…

学びて時にこれを習う(3) 江戸時代の学問観と学習法

前回まで (1) (2) 荻生徂徠が博学を尊び、彼の学問観にいたってようやく文献研究として<スタディ>が自立してくる、と書いたが、もう少し調べてみると、そう単純な話ではなく、ちょっと違うかもしれない、慎重に考えた方がいいとも思えてきた。 文献…

学びて時にこれを習う(2) 文献研究<スタディ>の成立

(1)の続きです。 近世・近代の「実学」についてのイメージとは別の切り口でも少し考えてみたい。 何故か生き生きと「学問」している人々を描く小説 最近読んだ冲方丁の歴史小説群は、『光圀伝』にせよ、あるいは『天地明察』にしてもそうだが、なんだか実…

学びて時にこれを習う(1) 「実学」の「伝統」に関する覚書

このところ「学問」とは何であるかについてぼんやりと考えている。 図書館に就職してよりこの方、多くの「学問論」を目にしたし、また色々な人から学問観を聴く機会を得た。これは職業柄のせいかもしれないが、ある意味では、他の人よりも多く学問論に接して…

戦前期における出版法規と納本制度(図書編)

「検閲」問題が今熱いのかどうかは知らないが、 私が出版史を意識するようになった図書館就職後以降だけ見ても、 「検閲」の本は最近結構出ている。 検閲と文学--1920年代の攻防 (河出ブックス) 作者: 紅野謙介 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2009/…

メディア・図書館・情報資源

前に「図書館史の勉強をはじめた理由」というエントリを書いたときにもちょっと意識していたのだが、図書館法が改正されて、司書課程に関する講義が再編されるにあたって、最近図書館資料を「メディア」と言い換える事例が多いのが少し気になっている。 メデ…

国民国家・ナショナリズム・図書館

先日出席した勉強会で、とある友人から 「国民国家を構成する図書館、という視点に対し、図書館屋はあんまりにも無自覚すぎるんじゃないか?」 ということを言われた。それを聞いて、「そうだなあ」と思ったのだが、勉強会全体の議論が明後日の方向に行って…

日本史研究と文房具

ノウハウは公開してもまったく問題はない。なぜなら、大変なのは「実行する」ことだから。アイデアは「モノ」にしなければならない。設計がいる。材料がいる。 (山崎将志『残念な人の思考法』(日本経済新聞出版社、2010)p.76) 残念な人の思考法(日経プレ…

日本史研究とWebサービス

ええと・・・。 あからさまに「らしくない」、そんな大仰な題をつけたので慌てて弁解しておきたいのだが、今回の題は、私が日頃使っているWebサービスを、もう少し効率的に動かしたいというモチベーションによるもので、要は、手元のカードを切ってみて、「…

図書館史の勉強をはじめた理由

最近、図書館史を専門にしているわけではない友人たちが、続々と図書館史関係の優れた発表をしていて、焦っている。 図書館系勉強会KLC 「図書館史を勉強したい!教科書分析編」(発表者:min2flyさん) 図書館研究所あるいは「図書館の頭脳を持ちたいと…

江上敏哲『本棚の中のニッポン』読書メモ

本棚の中のニッポン―海外の日本図書館と日本研究 作者: 江上敏哲 出版社/メーカー: 笠間書院 発売日: 2012/06/01 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 183回 この商品を含むブログを見る 日本人の知らない「海外の日本図書館」。そこはどういうところで、…

新聞記事による帝国図書館探訪

先日、連休を利用して図書館で古い新聞記事を漁っていたら、大変変わったものが見つかった。いくつかの図書館史の文献をみるとたまに引用されているようなので、別段珍しいものでもないのだろうが、ブログにあげて紹介してみる。 記事は履霜生という人の「帝…

『中国化する日本』を持ってビブリオバトルに行ってきました。

ビブリオバトル、というものをご存じだろうか。 5分間で口頭で書評して、参加者が一番読みたくなった本を競い合う 勉強会とエンターテインメントの中間形態のような場である。 2007年頃から、京都を中心に関西圏ではじまり、 一昨年あたりから図書館系のイベ…

雑誌の歴史を調べてみる(2) 木村毅の「日本雑誌発達史」

前回のエントリで取り上げた、 木村毅 著. 現代ジャアナリズム研究. 公人書房, 昭和8. 376p に収録されている「日本雑誌発達史」にどれだけのことが書いてあるか、まとめておきたい。 雑誌の歴史の枠組みについて一定の参考になりそうだからである。 まずざ…

雑誌の歴史を調べてみる(1)

少し調べたいことがあって、岩波書店『文学』のかなり古い号を繰っていたら、こういう特集があった。 猪野 謙二. 他. 文学雑誌をめぐって(座談会). 文学 / 岩波書店 [編]. 23(1) 1955.01. ISSN 0389-4029 岩波書店は1950年代から、『文学』で、毎月一冊ずつ…

『歴史学および日本文学研究者に対する実態調査からみる人文科学系研究者の情報行動』を読んだ。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。 さて、昨日、素晴らしい報告書を発見してしまい、小躍りして人に紹介しまくっていたのですが、ただ紹介するだけでなく、どの部分に感銘を受けたかについて、少し紹介させていただきたいと思います。 ここから、いつ…