日本史

高校日本史の学び直しのための文献ガイド

※2018/8/23ちょっと文献追加 図書館を退職して大学に移って日々感じていることの一つに、高校で日本史を取らずに大学に入って、後で日本文学やその他の授業でやっぱり日本史の知識がいるんじゃないかと苦しんでいる子の存在がある。日本史の担当教員になった…

日本の検閲に関する本についてまとめ

少し前から必要があって集中的に検閲とか言論統制に関わる本を読んでいたら、友人に検閲についてわかりやすくまとめた本は無いものかと聞かれ(なにやらtwitterで言論統制の歴史がちょっと話題になったようでもあり)、まとまっているもの、となるとすぐに思…

ICT時代の日本史文献管理考

ちょっとした危機感 現在刊行中の『岩波講座日本歴史』は、一応毎回購入して一冊一冊読みながらノートをつけているのだが、つい先日、近現代のとくに新しい時代に入ってきた巻を読んでいたところ、結構強いショックを受けた。ちょっと専門の時代や主題がずれ…

日本史研究とiPad

本年もどうぞよろしくお願いいたします。 今年は正月休みも長く、例年より少し長めに帰省したりできたので、多少時間も出来、iPadを使いながら原稿を書くようなことを試みたところ、ふと、次のような疑問がわいてきた。 「自分は、iPadを買ってから1年が経過…

楊暁捷・小松和彦・荒木浩編『デジタル人文学のすすめ』読書メモ

「デジタル人文学」という領域 このたび、勉誠出版から刊行されている『デジタル人文学のすすめ』という本をいただいた。 デジタル人文学のすすめ 作者: 楊暁捷,小松和彦,荒木浩 出版社/メーカー: 勉誠出版 発売日: 2013/08/01 メディア: 単行本(ソフトカバ…

辞書事典にしたしむの話2――佐滝剛弘『国史大辞典を予約した人々』読書メモ

(本記事は出たばかりの本のネタばれを含みますので、ご注意ください) 国史大辞典 何とも変わった本が出た。本書は、『国史大辞典』を予約した人々はだれか、ということをひたすら紹介し続けるという本である。 国史大辞典を予約した人々: 百年の星霜を経た…

文化と社会のパラドクスについて――明治時代の「美術」問題から

芸術は誰のものなのか。みんなのものなのか、あるいは見る人が見て分かれば良いものなのか。マルクス主義なら使用価値に対する交換価値としてこれを論じるだろうし、文化人類学なら生存財に対する威信財としてこれを論じるだろう。そのパラドックスは、私が…

「図書館と歴史学の間」小考

最近目にとまった記事から 興味深い3つの記事の紹介から始めてみたい。 山田太造「日本史研究推進における情報技術・デジタル技術の役割」『人文情報学月報』第17号(2012年12月27日付発行) 情報学と日本史研究の「距離」について、こんな風に的確に要約さ…

戦前期における出版法規と納本制度(図書編)

「検閲」問題が今熱いのかどうかは知らないが、 私が出版史を意識するようになった図書館就職後以降だけ見ても、 「検閲」の本は最近結構出ている。 検閲と文学--1920年代の攻防 (河出ブックス) 作者: 紅野謙介 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2009/…

国民国家・ナショナリズム・図書館

先日出席した勉強会で、とある友人から 「国民国家を構成する図書館、という視点に対し、図書館屋はあんまりにも無自覚すぎるんじゃないか?」 ということを言われた。それを聞いて、「そうだなあ」と思ったのだが、勉強会全体の議論が明後日の方向に行って…

日本史研究と文房具

ノウハウは公開してもまったく問題はない。なぜなら、大変なのは「実行する」ことだから。アイデアは「モノ」にしなければならない。設計がいる。材料がいる。 (山崎将志『残念な人の思考法』(日本経済新聞出版社、2010)p.76) 残念な人の思考法(日経プレ…

日本史研究とWebサービス

ええと・・・。 あからさまに「らしくない」、そんな大仰な題をつけたので慌てて弁解しておきたいのだが、今回の題は、私が日頃使っているWebサービスを、もう少し効率的に動かしたいというモチベーションによるもので、要は、手元のカードを切ってみて、「…

江上敏哲『本棚の中のニッポン』読書メモ

本棚の中のニッポン―海外の日本図書館と日本研究 作者: 江上敏哲 出版社/メーカー: 笠間書院 発売日: 2012/06/01 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 183回 この商品を含むブログを見る 日本人の知らない「海外の日本図書館」。そこはどういうところで、…

『中国化する日本』を持ってビブリオバトルに行ってきました。

ビブリオバトル、というものをご存じだろうか。 5分間で口頭で書評して、参加者が一番読みたくなった本を競い合う 勉強会とエンターテインメントの中間形態のような場である。 2007年頃から、京都を中心に関西圏ではじまり、 一昨年あたりから図書館系のイベ…

雑誌の歴史を調べてみる(2) 木村毅の「日本雑誌発達史」

前回のエントリで取り上げた、 木村毅 著. 現代ジャアナリズム研究. 公人書房, 昭和8. 376p に収録されている「日本雑誌発達史」にどれだけのことが書いてあるか、まとめておきたい。 雑誌の歴史の枠組みについて一定の参考になりそうだからである。 まずざ…

雑誌の歴史を調べてみる(1)

少し調べたいことがあって、岩波書店『文学』のかなり古い号を繰っていたら、こういう特集があった。 猪野 謙二. 他. 文学雑誌をめぐって(座談会). 文学 / 岩波書店 [編]. 23(1) 1955.01. ISSN 0389-4029 岩波書店は1950年代から、『文学』で、毎月一冊ずつ…

『歴史学および日本文学研究者に対する実態調査からみる人文科学系研究者の情報行動』を読んだ。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。 さて、昨日、素晴らしい報告書を発見してしまい、小躍りして人に紹介しまくっていたのですが、ただ紹介するだけでなく、どの部分に感銘を受けたかについて、少し紹介させていただきたいと思います。 ここから、いつ…

ある「あとがき」の話

歴史は何のために書くのか。この手の質問を人からされたら、私は嫌な顔を隠せとおせないだろう。ただ、昨日のエントリについてそういう疑問が生じたかもしれない…という懸念は、私のなかにもあって、やはり不十分な文章をパブリックな場にあげても傷つくのは…

高校日本史と大学の日本史研究のあいだ

またも同僚との会話で恐縮なのだが、「日本史を研究するって具体的にどういうことなんですか。もうあらかたのことはわかっちゃってるんじゃないですか、とくに最近のことは」ということをたまに言われる。 たぶん私だけでなく、歴史学を専攻していた人は、同…

歴史的資料を図書館に見に行く

以前同僚に昨日書いたような歴史的資料の話をしたら、その重要性はわかったんだけれど、じゃあどうやって探すんだ。ということを言われた。確かにそれはもっともな話である。 そもそも史料とは何か。これについては古典がいっぱいあるのだけれど、大学院に入…

人文系必読書をめぐる議論について・その4

まだこの話題で続ける気なのか、と自分でも思うものの、図書館の選書業務の参考になることを一切書いていなかったので、そちらの補足を。 なんだかこれまでのエントリといきなり矛盾するようだが、大学図書館の蔵書でどの図書館も持っている本は読んだ方が良…

人文系必読書をめぐる議論について・その3

正直に告白すると、私は本を読まない高校生だった。いや、中学生のころも小学生のころも、読まなかった。 そもそも高校2年の秋まで美大進学をかなり本気で考えていたので、活字の本などむしろ邪魔だくらいに思っていた。そんな人間が今図書館で働いているの…