初学者向けメディア史関係文献リスト:雑誌から日本の近代史を見る

 

本リストは、私、長尾が2023年度に「雑誌から日本の近代史を見る」という授業資料に添付した参考文献リストを元とし、その一部内容を修正したものです。聴講者は1、2年生向けの入門講義でした。

 

見返すとなかなか不十分な点が多々あって気になりますが、近代日本の活字メディア史に興味があるけれどどこから手を付けたらよいだろうという人への案内になればと思い、公開してみます(放送や映画は全く触れられていません、あしからず)。

さらに知りたいという人はそれぞれの本の注記や参考文献一覧を参照してもらうのがよいです。

 

なお少々古い記事(10年以上前!!)となりますが、関連して以下のようなものも書いております。よろしければ、あわせてご覧ください。

negadaikon.hatenablog.com

negadaikon.hatenablog.com

講義内容に直接に関わるものとして

  • 長尾宗典「雑誌研究と図書館:歴史研究の立場から」『専門図書館』311号(2022年12月)
  • 長尾宗典「新聞・雑誌メディア:社会の中でどのような役割を果たしたか」岩城卓二・上島亨・河西秀哉・塩出浩之・谷川穣・告井幸夫編『論点・日本史学』(2022年、ミネルヴァ書房)所収
  • 長尾宗典「「誌友交際」の思想世界」中野目徹編『近代日本の思想をさぐる』(2018年、吉川弘文館)所収
  • 長尾宗典「史料としての雑誌」『メディア史研究』第39号(2016年2月)

 

日本のメディア史研究に関して

メディア史に関する通史にどのようなものがあるか?と問われるたび、入手がちょっと難しいけれど『メディア史を学ぶ人のために』だと思う、と答えてきたのですが、最近、有山先生による通史が刊行されたので、今後これが標準になると思います。

  •  有山輝雄『近代日本メディア史』Ⅰ・Ⅱ(2023年、吉川弘文館
  • 有山輝雄・竹山昭子『メディア史を学ぶ人のために』(2004年、世界思想社

さらに古典的な文献に関しては『メディア史研究』50~52号の特集「メディア史研究再訪」で取り上げられたものを確認してもらうのも良いと思います。

取り上げられた主な文献を抜粋すると以下のとおりです。

 

長谷川如是閑「資本主義社会に於ける新聞紙の商品化とその奪回」
小野秀雄『新聞言論』
『日本出版百年史年表』
田中純一郎『日本映画発達史』
内川芳美『日本広告発達史』
箕輪成男『歴史としての出版』
前田愛『近代読者の成立』
山本明『現代ジャーナリズム』
香内三郎『活字文化の誕生』
神島二郎『近代日本の精神構造』
宮武外骨編『公私月報』
杉村楚人冠『最近新聞紙学』『新聞の話』
柳田国男『明治大正史 世相編』

ほか

詳しくは以下を↓

メディア史研究再訪 | CiNii Research all 検索

 

本の雑誌の歴史

1990年代以降、明治以来の個別のタイトルの研究はどんどん進展し、また、編集者やジャーナリストの本格評伝も充実してきているのですが、それらを総合する雑誌通史の決定版というのは、まだないようです。

ちくま新書『思想史講義』各巻は、メディアとしての新聞・雑誌への言及があります。

  • 中野目徹「新聞と雑誌」山口輝臣・福家崇洋編『思想史講義』明治篇Ⅱ(2023年、ちくま新書)所収
  • 水谷悟「雑誌メディアと読者」山口輝臣・福家崇洋編『思想史講義』大正篇(2022年、ちくま新書
  • 中野目徹「近代思想史研究における雑誌メディア」『日本思想史学』49号(2017年)

雑誌の諸側面を豊富な図版とともに解説したものとして印刷博物館の図録があります。

  • 印刷博物館編『ミリオンセラー誕生へ!』(2008年、東京書籍)

また、以下もその後の研究に与えた影響からいって重要な本といえます。

そのほか、ジャンルごとに婦人雑誌、児童雑誌、趣味の雑誌等々、雑誌の持つ娯楽的側面や、出版社に関する史料発掘と研究が進んでいます。これは個別に探すと見つかると思います。

 

国立国会図書館がやった雑誌展の図録も参考になりそうです。

 

雑誌の特性に関しては、川井先生の議論が重要かと思います。

  • 川井良介編『出版メディア入門』第2版(2012年、日本評論社

 

 

授業は近代日本が対象だったので入れませんでしたが、射程を戦後まで広げるなら、たとえば以下に掲げる本も方法論を考える上で重要かと思います。

 

また、青山学院大学グループを中心に、現代史研究において雑誌活用が有効であるとの議論が展開されています。

cir.nii.ac.jp