図書館史ノートその2 図書・図書館史の参考文献

 順番が前後したが、図書・図書館史を学ぶために参考になるものを挙げておく。

 司書課程のテキストとして、主なものには以下のものがある。なお、教科書の比較については第20回関西文脈の会における佐藤翔氏の発表内容「司書養成科目「図書・図書館史」を考える 問題編と解答編」が非常に参考になる。あわせて参照されたい。

  • 北嶋武彦 編著『図書及び図書館史』(東京書籍、1998)
  • 寺田光孝編集『図書及び図書館史』(樹村房、1999)
  • 佃一可『図書・図書館史』(樹村房、2012)
  • 小黒浩司 編著『図書及び図書館史』(日本図書館協会、2013) 
  • 綿抜豊昭『図書・図書館史』(学文社、2014)
  • 千錫烈 編著『図書・図書館史』(学文社、2014)

 アジアの図書館の紹介に力を入れたり、現代に重点があったり、それぞれの教科書に代え難い特徴があるが、小黒編の教科書はメディアの歴史を論じたあと、世界の図書館、日本の図書館について論じており、メディアの歴史と図書館の歴史の相互の関係性を捉える上ではわかりやすい構成ではないかと考えられる。

図書や記録メディアの歴史を学ぶには、以下の文献がある。書誌学の伝統に加え、社会史の手法を用いた書物の歴史の潮流だけでなく、メディア論の文脈でも本の歴史は議論される。メディア史の研究は、日本国内では1990年代以降とくに活発だが、受け手に注目する成果も挙げている。

書物の歴史 (文庫クセジュ)

書物の歴史 (文庫クセジュ)

図説 本の歴史 (ふくろうの本/世界の文化)

図説 本の歴史 (ふくろうの本/世界の文化)

 図書館史の概説(日本)については、読みやすい一般向けの本は、あまり書かれていない。研究書や概説書が中心である。また、『図書館雑誌』連載記事をまとめた『図書館を育てた人々』シリーズもある。

 最近刊行された『源流から辿る近代図書館』は、独自視点で近代の図書館について語っている。もともと『日本古書通信』の連載なので、多少一般読者を意識した内容になっているが、典拠が書かれていないため、引用するには原典にさかのぼる必要がある。

 

 図書館史概説(世界)に関しても一般向けと言い得る本が少ないが、現存する海外の図書館を豊富な図版で紹介したものが近年少なからず刊行されており、これらから個々の図書館の歴史について調べて行くのが良いと思われる。また、研究所レベルでは以下にあげたもののほかに、各国の図書館史の本が存在する。米国については、邦訳が数多く出されており、ひょっとすると日本近代より研究書が多いかもしれないほどだが、非常に充実している。

  • E.D.ジョンソン著、小野泰博訳『西欧の図書館史』(帝国地方行政学会、1974)
  • 草野正名『図書館の歴史』三訂版(学芸図書、1975)
  • ヨリス・フォルシュティウス、ジークフリート・ヨースト 著、藤野幸雄 訳『図書館史要説』(日外アソシエーツ、1980)
  • 藤野幸雄『図書館史・総説』(勉誠出版、1999)
  • 川崎良孝『図書館の歴史 : アメリカ編』増訂第2版(日本図書館協会、2003)
  • 藤野幸雄, 藤野寛之 著『図書館を育てた人々. イギリス編』(日本図書館協会、2007)
  • 和田万吉『図書館史』(慧文社、2008)…戦前の図書館学教習所で行われた欧米図書館史を一冊にまとめたものの復刻版。蔵書数等簡単なデータだけだがアフリカなどの図書館まで載っていて驚く。
  • スチュアート・A.P. マレー 著、日暮雅通監訳『図説図書館の歴史』(原書房、2011.12)
図説 図書館の歴史

図説 図書館の歴史

 戦後の図書館史研究についてのレビューの主なものには以下のものがある。図書館史の研究動向を知るうえでは是非参照されたい。

  • 石井敦「わが国の図書館史研究について」『図書館文化史研究』20号(2003年)…戦後の研究についての回想。
  • 三浦太郎「CA1673 研究文献レビュー 図書館史」『カレント・アウェアネス』No.297(2008年9月20日

 このほか森縣氏の以下のウェブサイトは非常に充実しており、勉強になる。

  • 書物の歴史(森書物史概論 書物史ワーキンググループ編)